白山最終編

ようやく私にとって登山らしくなって来た
でも、もう遅すぎかも・・・
もっと景色を楽しんで登れると思っていたので・・・

余裕が出はじめてからは、昨年富士登山で体験した
ような出来事が起こりはじめていた・・・
まるでシャンバラにいるように感じられ
天上界からの癒しの音楽が舞い降り
私をすっぽりと囲んでくれる
ますます深い領域に誘われ
重力さえ失ったようだ
私の肉体は何処へ
周りの色が無くなり
透明に輝きはじめる
すると
神々の声が
何処からともなく
こだましはじめる・・・
大宇宙の中へと
からだごと吸い込まれているみたい

室堂から白山頂上を目指して登りつめて行く
大地に吸い込まれる位
一歩に大きな意味を含んでいる
涙が自然と流れ止まらない
溢れている涙が
ククリの涙であるようにさえ感じる
岩に挨拶しながら頂上に近づいていく
奥宮の奥宮にたどり着くなり
からだが震えだし大泣きしている
魂の会話がはじまったようだ
深くお辞儀をしたまま
時間が止まってしまったようだ
ただただ涙だけが流れている
御来光を待っているときも
天上界からの歌声がささやかに流れ
私を包んでくれる
もう新しい世界がはじまろうとしていた
「その為に今ここにあなたはいるんだよ」
とそっと言ってくれた
新しい夜明けを迎えたんだ
と世界中に告げなければならない
宮司さんの「日本バンザイ」で
白山は美しい日本の夜明けを迎えた気がした
お池コースをぐるりと散策して
白山の頂上から遠ざかった

次の山小屋へ着いたとたん
大粒の雨が降り出した
雷雨が続き
地鳴りが・・・
稲妻が横に流れ
何時までも激しく降り注ぐ
やがて
雨も上がり大きな虹が・・・

いつかしか誰かに聞いたことがあった
二重の虹は2週間以内に地震が起こると・・・
不吉な予感が脳裏をかすめていた
山小屋に一泊したが一睡も眠れず
早朝に一人で散歩に出かけた
すがすがしい麻の空気は
疲れた身体を芯まで癒してくれた

帰りの道中もまた二重の虹を・・・
何もおこらなければと
そう思いながら白山を後にした